発達障害の法律上の定義と意味
1.発達障害の法律上の定義
自閉症・アスペルガー症候群 その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって,その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう ⑴ 行政サービスの範囲は政令で定める 医学的な定義とは必ずしも一致しない ➡ 例えば,この法律では知的障害を含まない ⑵ 通常低年齢(早ければ3歳頃,遅くとも小学校に入る頃)で,発達障害の有無は分かる 特性に配慮した支援につながるなら,早期発見・早期療育(治療ではない)は重要 ⑶ 脳 /中枢神経系の機能障害と“推定” ➡ 生まれ持った“脳の働き”に関する特性 環境が主原因ではない ただし,当然,環境は本人の状態に影響する セロトニン,オキシトシン等の神経伝達物質との関連 2.発達障害の意味 Developmental Disorder :発達の凸凹やアンバランスが大きい 非定型発達 発達凸凹 発達障碍/障がい ➡「発達障害は障害だから治らない/発達障害は治る」はともに現時点では誤り その人の有する本質のひとつとしての「発達特性」として理解すべき ➡ 症状そのものを変えようとすることにエネルギーを使うのではなく,それを前提にしてお互いが関わるほうが建設的 主な発達障害
⑴ (限局性)学習障害 /(限局性)学習症 (S)LD
読み書き計算のどれか,あるいは複数に極端な落ち込みがある ディスレクシア /読み書き障害 ➡ 知的障害とは異なる ⑵ 発達性協調運動障害 /発達性協調運動症 (DCD) 粗大運動(マット運動,ダンス,自転車など)や微細運動(箸使い,ボタンはめ,運筆)などがぎこちない ⑶ 注意欠如多動性障害 /注意欠如多動症 (ADHD) 落ち着きのない多動性,だしぬけに行動する衝動性,ケアレスミスの多い不注意が3つの柱 行動のコントロールがうまくいかない ➡ 比較的,多動/衝動性タイプは男性に多く,不注意タイプは女性に多いとされてきた ⑷ 自閉症スペクトラム障害 /自閉スペクトラム症 (ASD) 対人コミュニケーション/社会性の問題,同じ行動の繰り返し/こだわりの強さが2つの柱 ➡ 感覚の異常(過敏/鈍感)を伴うことがよくある 建設的な関わり 特性そのものを変えようとする関わり方をしない。もし,発達障害に「トリセツ」があるとしたら,必要なのは相手側ではなく関わる側のトリセツ。相手を変えることはできない。自分が変わることはできるかもしれない。 ⑴ 注意欠如多動性障害/注意欠如多動症 ➡エネルギー過剰による行動のコントロール不全 @ エネルギー自体は,抑え込むのではなく適切に発散する方法を考える A 身近に冷静な助言者を置いて,事前に枠をはめることで見通しを持たせる B 薬物療法 ADHDの症状に処方される薬は,現在,4種類が認可されている。その他の発達障害の症状自体に効く薬は存在しない。 ⑵ 自閉症スペクトラム障害/自閉スペクトラム症 「自閉」とは,「内に引きこもる・心を閉ざしている」という意味ではない。特性として人だからと言って特段の関心を示さないので,他者に自分の“視点”を移すことが苦手な状態。 @ ほのめかし・あいまいな表現を避けて,数字等で明確な表現を心がける A その人のやり方・ルーチンを尊重する。その上で,他の合理的なやり方や一般的なルールを伝えて,お互いの考えをすり合わせる。 B 過度に追いつめたり決めつけたりしない。期限や条件には幅を持たせる。要求は「しなければいけないこと」「した方が良いこと」「しないで欲しいこと」に分ける。 C 話すときの留意点 ・相手の理解に対する思い込みを捨てる ・トーンを下げて穏やかにゆっくり話す ・説明は簡潔で易しい表現を心がける ・抽象的な表現,あいまいな伝え方をしない ・否定的な表現ではなく肯定的な表現にかえる ・余計なこと,必要ではないことは言わない D 過敏さへの配慮 人と関わること自体がストレスなので,一人で静かに過ごす場所/時間を確保する。 E 小さい時から「ルールは変わるものだ」という認識をゆっくりと育てる F 体験を通して,「こういうやり方もある/これでも別に大丈夫」という経験値を増やす。物事には幅があり“あそび”の部分があることを体感することが大切。 まとめ ⑴ 問題の多くは,お互いのコミュニケーションの場において起こる 発達障害がお互いにとって“障害”となるのは,何らかのずれが生じたとき。その場合の“障害”は,すべてお互いの“すりあわせ”によって解決されるべき問題なのではないのだろうか?自分を“健常”の立場におき,相手を“障害”の立場においた上での「〜との関わり方」といった一方的なものではないだろう。どこまでいってもお互いの関わり方は「その人と自分の特性およびその人との関係性」ですべて異なるはず。 ⑵ “障害”という先入観を外し,その人を「全体としての個人」として見ることが必要 発達障害の症状とされるものは,だれにでも多かれ少なかれあるもの。だとしたら,大切なことは「自分ならどうなのだろう」と考え「自分の延長線上の存在」として相手を見ることなのではないか?決して,お互いは交わらない対岸にいるわけではない。 《文責》神戸教育カウンセリング研究会事務局 |
発達障害者支援法
自閉スペクトラム症等の発達障害の法律上の定義等について定めた法律。2005年に施行され,2016年に一部改正されたが,その骨子は変わっていない。
大人の発達障害
大人になってから症状が現れたのではなく,大人になってはじめて発達障害と診断されたという意味。大人になって初めて医療機関を受診し,二次障害に対する服薬等が始まるケースもよくある。近年,自閉傾向の診断は大人になってから診断を受けるケースの方が多いとされている。
知的(発達)障害 /知的発達症
認知能力と社会への適応能力で診断される。IQ軽度50〜70程度・中等度36〜49程度・重度20〜35程度・最重度19以下程度。療育手帳は都道府県・政令指定都市が独自に交付。神戸市の場合,軽度B2・中度B1・重度Aに分けられる。境界知能とはIQ85〜70程度とされる。
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