トーマス・マン
トーマス・マンについては、「魔の山」のドイツ語の構文や文体および音の情報に関する分析がある。購読脳を「イロニーとファジィ」、執筆脳を「ファジィとニューラル」とし、それらのマージから「トーマス・マンとファジィ」というシナジーのメタファーを作成した。「魔の山」がファジィ集合論で「ヨーゼフとその兄弟」がファジィ測度である。
魯迅
魯迅の「阿Q正伝」では、サピアの「言語」を題材にしたことばの比較や中国語と日本語から見えてくる思考様式の違いを考えた。さらに「馬々虎々」という精神的な病を記憶のモデルとリンクさせながらカオスの世界を説明している。シナジーのメタファーは、「魯迅とカオス」である。また、「狂人日記」は、狂人の統合失調症について解説がある。
森鴎外
歴史小説を中心にして「鴎外と感情」というシナジーのメタファーを分析している。例えば、「山椒大夫」や「佐橋甚五郎」さらには「渋江抽齊」でデータベースを作っている。鴎外の仕事は、陸軍軍医で規律に厳しい環境にあり、一方家庭での創作の際には楽しいことを考えていた。喜怒哀楽のような人間の感情は、行動と組みになり、感情は情動と畏敬に、情動は創発と誘発に下位区分される。データベースは、登場人物を駒にして文理で考えている。因みに、マイニングツールを使用した分析では、感情表現に関する分析が面白い。
シナジーのメタファーは、マクロに通じる分析方法
文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロの分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、執筆脳の組み合わせをMicrosoft Bingや百度のような検索エンジンに入力し、3Dの奥軸を探す。同時に、各場面をLに読みながらデータベースを作成して全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探していく。例えば、神経伝達物質やホルモン。
3Dの箱には、バラツキなどの統計処理から数字が溜まり、箱の数が増えることでクラウドから○〇社会学といった指令が出てマクロのまとめになる。
この種の分析は、作者の執筆脳を予測するためのものである。人工知能に見立てた検索エンジンによる連想検索が作家の執筆脳と認識されれば、シナジーのメタファーが将来的にはサイエンスと呼ばれるようになっていく。
執筆脳の定義
執筆脳の定義は、1. 作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み、2. AIや健常・疾病脳のような理系とのつながりである。そのため、先行研究は、トーマス・マン(1875−1955)、魯迅(1881−1936)、森鴎外(1862−1922)、川端康成(1899−1972)、ナディン・ゴーディマ(1923−2014)、三浦綾子(1922−1999)などの執筆脳に関する私の論文や著作である。
分析する作家たち
トーマス・マン、魯迅、森鴎外の著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析を意識し、地球規模と他系列との共生(計算文学と病跡学)についてナディン・ゴーディマ(1923−2014)や三浦綾子(1922−1999)さらにはパール・バック(1892−1973)も交えて考えている。分析している作家の数は、日本、中国、ドイツ、フランス、南部アフリカ、北米、南米、オセアニアを合わせて現在100人弱である。